MEMOS

ちょっと書き留めたかったことなど。

『インヒアレント・ヴァイス』

 映画方面は不勉強極まりなくて、監督とか役者の名前とか全然覚えられないし、たぶん覚える意欲もあまりない……ただ、トマス・ピンチョンの原作の映画ってどうなるんだろう、という興味で観に行った。とても面白かった。原作はいま読み始めたところ。

 1960年代の文化に対する郷愁って今まで全然理解ができなかったんだけれども、この映画を観ていて、ちょっと分かった気がした。この作品で描かれているのは70年代のカリフォルニア。60年代のヒッピー文化が金と権力で操られ、利用され、転覆させられていく。なんとも切ない。

 海外の映画評を読んだところ、原作にかなり忠実と書いてあったので、いま頑張って英語で読んでいるところ。映画がすごくピンチョンをリスペクトして作られたものであることが伝わってくる忠実さで、それだけでも凄いことだと思う。

 ピンチョン作品の面白さなんて私が語ることは到底できない。とにかく情報が多くて、どんどん時空間が広がっていく。終盤になっても強烈なキャラがどんどん登場して、バカすぎてどうしようもないことしてて、支離滅裂で、自由奔放すぎて、常識が通用しない。普通だったら強力な伏線になりそうなキャラとか情報が惜しげもなくゴロゴロ放り出されていたり、地味な情報がいつのまにか重要情報に化けてたり。あぁもう訳分からん!!って投げたくなる瞬間もあるんだけれども、読んでいるうちにバカすぎるキャラは憎めなくなってるし、支離滅裂なはずなのに、いつのまにか各要素が繋がって、太くて強い物語の筋が出来ていて、物語の奥で蠢く禍々しい力に絡め取られて、読めてしまう。あらすじなんてどうでもいいカオスっぷりなのに、やたらセンチメンタルなときがあって、切なくなったり感動しちゃったりする。なんでこんな話に感動してるんだろうと我に返って、キツネにつままれたような気分になる。

 この映画は、まさにそんなピンチョンを読んだときの体験をさせてくれるような映画だった。凄いことだ。結局、金と権力やら渦巻いている陰謀自体はなんにも解決されないんだけれども、元彼女のいまの恋人が謎の施設に入れられて云々という事の発端になった事件を解決する過程で知り合ったサックス奏者の家庭が修復されて、これが解決したと言っていいのか分かんないけど、とりあえず良かったんだろうな~という曖昧な感動で終わるかと思いきや、大麻をむしゃむしゃ食べ出しちゃう人が出てきて、バカwwwwwwwwwww草不可避wwwwwwwwwwとにかく、ロス市警ビッグフット刑事の役者さんの芝居が強烈すぎて、楽しすぎる……と笑って終わらせたくなりつつも、麻薬漬けの主人公たちのパラノイア的世界観がけっこう現実かもしれないとドキッとする。非常識で、バカバカしくて、感動的で、薄ら恐ろしくて、うっかりするとパラノイアに巻き込まれそうになる。

 原書頑張って読み通せるといいなー。